写真は、左: 刈り取り後1週間のヨウサイ. 中: 刈り取り後3週間のヨウサイ. 右:
ヨウサイの花.
動物園で飼育されているセレベスバビルサが、飼育場に迷い込んだネズミや鳩を捕食する様子も観察されています. また、生後間もないセレベスバビルサが親以外のバビルサに捕食される光景も記録されています. つまり、他のイノシシ科動物と同様にバビルサは雑食性と言えます.
セレベスバビルサ(Babyrousa celebensis)はイラクサ科のウワバミソウの仲間(Elatostema sp.)を好んで食べるとも報告されています. その他にも稲作地帯では稲穂、森林ではマンゴーなどの様々な熱帯果実をエサにしています.
スラウェシ島では、イチジクの仲間(Ficus sp.)の果実が野生動物の重要なエサになると言われていますが、マレンゲ島ではトギアンバビルサ(Babyrousa togeanensis)の主食になるほどではなさそうです. また、幹からデンプンがとれるマサゴヤシ(Metroxylon sagus)に付く甲虫の幼虫や土壌中の昆虫もエサになるようです. マレンゲ島では、トギアンバビルサが農耕地に侵入して、トウダイグサ科のキャッサバ(Manihot utilissima)、サトイモ、トウモロコシ、サツマイモ、サトウキビ、カカオの果実などの作物を食い荒らし、島民を悩ませています.
セレベスバビルサの繁殖実績を誇るスラバヤ動物園では、エサとしてヒルガオ科のヨウサイ(Ipomoea
aquatica)、サツマイモ、パパイアなどを与えています.
ヨウサイ(インドネシア語名、kangkung カンクン)は、東南アジアで広く栽培されている重要な植物で、柔らかい葉と茎は野菜として、また養豚農家では豚のエサとしても用いられています. その種小名aquaticaが示す通り、水を好む植物です. バリ島では水田の片隅で栽培されています. 成長が速く、茎の根元を2,3cm残して刈り取ると、3週間で新芽が30cmを超えるほどです. アサガオやサツマイモの花とよく似た白色の花を咲かせます.
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<フィールド1>last modified: 17 September 2007 |
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写真は、上: パンギノキ. 下左: パンギノキ果実とその内部. 下右: パンギノキ種子と果実.
野生のバビルサのエサのうち、イイギリ科のパンギノキ(Pangium edule)が重要なものと考えられています. 直径20cmを超える褐色の球形の果実をつける落葉高木です. 熟したパンギノキの果実は、高い枝から自然に落下して、わずかに甘い香りを漂わせます. バビルサは嗅覚が優れており、果実を容易く探し当てるようです. 熟していれば比較的簡単に外皮を割って、なかの黄色く柔らかい組織を食べることができます.
現地の人々も食材としてパンギノキの種子や若葉を利用しています. 観光地として有名なバリ島でも朝市の乾物屋で乾燥させたパンギノキの種子が売られています. しかし、種子には青酸化合物が含まれているので、長時間加熱するなどの特別な調理方法が必要になります.
Pangi パンギノキ
マレンゲ島では、まれに、トギアンバビルサ(B. b. togeanensis)の雄の成獣が下顎の牙を器用に使ってココヤシ(Cocos nucifera)の果実と種子をこじ開けて、なかの胚乳を食べることがあります. 牙が生えてこない雌や子ども達は自力でココヤシを食べることができません.
しかし、農夫がコプラ(ココヤシの乾燥胚乳)づくりをはじめる日には、雌や子どもも容易く栄養豊富なココヤシにありつくことができます.
まず、農夫は集めたココヤシ果実の外側にある繊維質の部分(中果皮)を剥がして、なかから椀型の硬い殻(内果皮)で覆われた種子を取り出します. 山刀で種子を割って、内側のココヤシ水(胚乳水)、胚、吸器(発芽時に胚乳中の栄養分を吸収する部分)を捨て去り、油脂を多く含む白色の胚乳だけを残します.
椀型の殻付きの胚乳をやぐらに積み重ねて一晩放置して水を切ります. その晩、ココヤシの甘い香りを嗅ぎつけてトギアンバビルサは作業場に現われ、投げ捨てられたココヤシの胚や吸器を食べるのです. 大抵、翌朝までにはきれいに平らげてしまいます. 農夫はやぐらの上に積み上げたココヤシの胚乳を半日ほど燻して乾燥させます. さらに、3日間、天日乾しを続けてコプラが完成します. コプラづくりのやぐらの高さが充分であれば、マレンゲ島では、トギアンバビルサによるココヤシの被害は我慢できる範囲内です.
Coconut ココヤシ
野生のバビルサは、主に森林や田畑の水生植物、根、茎、葉、果実、キノコなどをエサにしています.
ときには小動物も食べる雑食性です.
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Diet エサ |