Selmierによると、1970年代にトギアン諸島では皮膚病の流行で多くのトギアンバビルサ(Babyrousa togeanensis)が死亡し、1978年の段階でトギアンバビルサの個体数は500-1,000頭と推定されています. 現在、マレンゲ島では島民自らトギアンバビルサの減少を認めており、現在の生存数が当時の推定個体数を上回っているとは到底考えられません.
筆者らはマレンゲ島でのトギアンバビルサの観察の合間に、バビルサについての聞き取り調査を兼ねて、島民の家を訪問しています. マレンゲ島に暮らす多くの人々は半農半漁で生計を立てています. 島の2ヶ所に小学校はあるが、中学校はまだありません. 島民の現金収入を得る手立ては限られています. 小規模なココヤシ農園で手間暇かけて100kgのコプラ(copra.
乾燥させたココヤシの胚乳. 油分65%以上 .)を生産しても、100,000ルピア(2001年8月現在、約1,300円)の収入にしかなりません! マレンゲ島の森林から切り出してきた4mのラタンは、ラタンの種類によって、1本、250〜350ルピア(2001年8月現在、約4円)にしかなりません! 彼らの生活は決して楽ではないのです.
ある一家を訪ねたときのこと. 耳を疑うような重要な証言を聞くことになりました. マレンゲ島でも依然としてバビルサが駆除されているというのです! 多種多様な果樹を含む
Status on Malenge マレンゲ島での保護実態
森林は伐採されて農耕地として利用されています. キャッサバ、サトイモ、トウモロコシ、サツマイモ、サトウキビ、カカオなどの作物が栽培されているため、マレンゲ島の農耕地はバビルサの行動圏と隣接したり、重複することになります. そのため、バビルサは効率よくエサにありつける農耕地をエサ場にしてしまうのです. 日本の中山間部でのイノシシによる農作物被害の状況と同じです. 島民にとっては、作物の収穫量を減少させる原因のバビルサは害獣です. その証言者の話しによると、マレンゲ島の島民は宗教上の理由からイノシシ科に属するバビルサの肉を一切食べず、駆除した後は、そのまま海岸に放置するそうです. その後、バビルサの肉はその集落で飼育されている犬の腹を満たすというのです. その証言を裏付けるように、その集落の海岸には、形態学上の特徴がみられるバビルサの骨が散在していました.
写真は、マレンゲ島の集落に近い海岸に残されていたトギアンバビルサの骨です. 写真上、バビルサの寛骨(Os
coxae). 写真下、バビルサの前腕骨(Ossa antebrachii)の一部.
バビルサ(Babyrousa celebensis)が危急種(vulnerable)に、ヘアリーバビルサ(Babyrousa babyrussa)とトギアンバビルサ(Babyrousa togeanensis)が絶滅危惧種(endangered)に区分されています(当時は、亜種として位置づけられていました.)
さらに、1982年以降、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES、ワシントン条約)」では、商業的な国際取引を原則的に禁止する種(附属書
I )に指定されています.
不幸にも、インドネシア国内ではセレベスバビルサの雄の頭蓋骨が、一部の外国人観光客向けアートショップで商品として取り扱われています. しかし、バビルサの骨、肉、皮革などを用いた物品は、バビルサの亜種、輸送形態、量の多少、用途を問わず、CITES(ワシントン条約)ならびに動物検疫上の理由によりインドネシア国外への持ち出し、日本国内への持ち込みが通常禁じられています.
写真は、マレンゲ島の山間部での森林伐採の風景です. マレンゲ島では、急斜面も農耕地として利用されています. 森林伐採の1週間後、伐採地の地面は灰で覆われてしまいました. 農夫の話によると、この土地にフトモモ科のチョウジ(丁字、Eugenia
aromatica)などの苗木を植え付けるのだそうです. この伐採地のすぐ下にはバビルサのぬた場があるのだが......
化石の調査から、バビルサはかつてスラウェシ島全域に分布していたと推測されています. しかし、(1)他のイノシシ科動物とは異なり、バビルサの産子数は通常1、2頭と少なく、また、(2)森林伐採によって野生動物は生活の場を狭められ、さらには(3)違法な狩猟が後を絶たないため、バビルサの生息域は縮小し、個体数は減少傾向にあります. 現在、バビルサの生息数は、4,000-5,000頭と推定されています
1931年以来、バビルサはインドネシアの法律によって全面的に保護の対象にされました. 国際自然保護連合(IUCN)が発表したレッドデータプックでは、1978年以来、セレベス
Conservation Status バビルサ保護の実態