鉄板の面白さ!「洋書(英書)50選」
第7信です。洋書(英書)を推薦するなどという立場ではまったくありません。百も千も承知の上の暴挙です。さはさりながら、洋書読みの大先達、児玉清さんを追悼したい(1)と思い立ちました。「洋書読み初心者はかく感じた」という記録を恐れ多くも申し上げる次第です。当方の気持ちとしては今はやりの言葉でいうと「鉄板」ですが、参考にならなくてもご容赦を!
(1) 「寝ても覚めても本の虫」児玉 清 2007 新潮文庫 によりますと、児玉さん、無類の推理小説・エンタメ小説好きなのです。これはめずらしい。普通もう少しかっこつけがあるとおもっていたのですが、余りに率直な推理小説・エンタメ小説好きの心情吐露にびっくりしました。そしてますますファンになった次第。
 鉄板の児童書 10冊
☆☆☆☆☆Harry Potter @〜BJ.K.Rowling (1997-1999)
今となっては流行過ぎ去りゆく途中かもしれませんが、どれほど毀誉褒貶あろうと、私は押します。何より大部。英語の練習にもいい。
☆☆☆☆☆Tom’s Midnight GardenPhilippa Pearce (1958)
この作品の不思議な透明感は貴重です。気づいてくれるかくれないか、やきもきしているうちに時が立つ。スケートの場面のスケール感もいい。そして不思議な通信方法、ラストの感動は得難いです。
☆☆☆☆☆From The Mixedup Files of Mrs’Basil and FrankWeilerE.L.Konigsburg (1967)
典型的なニューヨーク郊外の白人アメリカ人家庭。その子供達の成長物語。戦後絶頂期のアメリカ人を知りたかったらこの作品。しかし、始めて読んだ時はぶっ飛びました。そういう家出がありうるのか・・・心の解放にお薦め。
☆☆☆☆☆☆Emil And The DitectivesErich Kastner (1931)
この少年達の自然な連帯感は心底いいです。当方、人生に迷った感がありましたときこの作品のベルリン小僧達の存在を本気でうらやましく思ったものです。
☆☆☆☆☆Daddy-Long-legsJean Webster (1912)
まだ複雑にならない時代のアメリカの良心なのでしょうね。教養が生きていた時代の女子教育というやつかもしれません。今では不思議な教育なのでしょうかねー。ですが、なぜかいい。
☆☆☆☆☆Anne of Green GablesL.M.Montgomery (1925)
はずせません。活発で饒舌な女の子、いつの時代でもあこがれます。
☆☆☆☆☆HeidiJohanna Spyri (1880)
☆☆☆☆☆A Little PrincessF.H.Burnett (1905)
☆☆☆☆☆Little Load FauntleroyF.H.Burnett (1886)
3冊並べてしまいます。こういうストーリーこそ鉄板でしょう。子供時代に浸れた人は幸せです。英書慣れの時期に文句なくおもしろい。
☆☆☆☆☆Treasure IslandRobert Louis Stevenson (1883)
私がそうでしたが、「宝島」のエピソードなど知っているようでほとんど覚えていないのではないでしょうか。人生に対する諦観とでもいう雰囲気のしめになるのが意外でした。実に新鮮でおもしろかったです。
☆☆☆☆☆Mary Poppins シリーズ3部作P.L.Travers (1934)
この不思議な魔女の存在こそイギリスです。他の国では考えられない。いなくなる。続編で戻ってくる。またいなくなる、またも戻ってくる。本当にほっとしながらよみました。そしてとうとう少年達の成長とともに永遠にいなくなるのです。いくらでも深読みできます。いいですねー・・・
☆☆☆☆☆The Machine GunnersRobert Westall (1975)
第二次世界大戦下、イギリスの少年達が敵国ドイツの軍人を助けることになるのです。この設定だけで読みたい気持ちになるのでは・・・。
 単語制限本 5冊
☆☆☆☆☆☆On The BeachNevil Shute (1957)
私の場合、日本語で学生時代に読んだことがあるのです。英語の再学習のし始めのころ、しみじみと再会を喜びました。 (Penguin Readers 4)
☆☆☆☆☆The Day of The JackalFrederick Forsyth (1971)
このスピード感はすばらしい。原作とは別の傑作になっています。 (Penguin Readers 4)
☆☆☆☆☆☆Captain Corelli's MandolinLouis De Bernieres (1994)
十分でした。これだけで楽しめました。もっと正確にいいますと「深く悲しみ」ました。うなるような悲恋です。 (Penguin Readers 6)
☆☆☆☆☆The BodyStephan King (1982)
いいですねー。アメリカの少年の冒険談です。 (Penguin Readers 5)
☆☆☆☆☆☆The Silver SwordIan Serraillier (1956)
ナチスから逃げる子供達の冒険、これは原作で読んでみたいと痛切に思いました。 (Oxford 4)
 ジューベナイル(10代向け)10冊
☆☆☆☆☆HolesLouis Sachar (1998)
いやー英語で読めて幸せでした。いろいろな方に思わず宣伝しました。このアメリカ感覚は新鮮でした。
☆☆☆☆☆The AlchemistPaulo Coelho (1988)
スペイン南部からアフリカ北部の冒険ものぐらいに思っているといいのかなー・・・不思議な作品です。結局達成したのかしなかったのか・・・さーて。少年の夢は貴重です。パウロコエリョという著者に興味津々となります。
☆☆☆☆☆The Door Into SummerRobert A.Heinlein (1957)
タイムマシーンものの走りなのでしょうが、よくできているのです。純愛を貫く。いいですねー。
☆☆☆☆☆☆Island of The Blue DolphinsScott O’Dell (1960)
絶海の孤島の部族の最後の一人になってしまう女の子の記録。涙です。かつてベストセラーになったそうです。忘れさるのはもったいない!
☆☆☆☆Riding in Car With BoysBeverly Donofrio (1990)
アメリカという国の底力がここにありです。人生につまづいてもやり直せる仕組みがあることは貴重です。
☆☆☆☆☆☆Boy’s LifeRobert R.McCammon (1991)
鉄板です。○○が敵役になるのはいかがなものかと思いましたが、マッキャモンらしさがおさえられた本当にいい作品です。
☆☆☆☆☆☆To Kill A MockinbirdHarper Lee (1960)
著者の人生で唯一の作品、しかもそれが人種差別に対する抗議まで含んでいる。なおかつ、少女の目で見た父親の像であり、町の姿であり、自身の成長記でもある。最後に引きこもりの青年の復活までにおわす、時代が現代かと錯覚するできばえ。すばらしい。
☆☆☆☆☆☆Snow Falling on CedersDavid Guterson (1995)
これまた基本的には著者の人生で唯一の長編です。日本人の女性と白人青年の悲恋という設定だけでも暗雲。書いた人はアメリカ人。すごい。そこに推理小説の要素が強力に絡む。そして素晴らしいラスト。お薦めです!
☆☆☆☆☆☆Rocket BoysHomer Hickam (1998)
アパラチア炭田の貧しい炭坑町で少年期を送った著者のエピソード。ソ連初の人工衛星「スプートニク」を町の夜空に見る主人公の場面、いいですねー。写真があるせいか、さえない主人公の写真、せつないです。日本の土井宇宙飛行士がからむのにも驚き。
☆☆☆☆☆A Walk to RememberNicholas Sparks (1999)
せつない純愛ものです。こんな純愛いいじゃないですか!
☆☆☆☆☆Half Broke HorsesJanette Walls (2009)
開拓時代ではないのですが、アメリカの西部の少女のたくましさ、そして、いつの時代にも共通の愛と別れと夢と現実、いいですねー。
 一般向け 10点(25冊)
☆☆☆☆☆ All Creatures Small And Large James Herriot (1972)
イギリス、エセックス郊外の若き獣医の記す心温まる小さなエピソードの数々。どの掌編でも彼は自己を主張せず、相手の行動で語らせる。邦訳が「ヘリオット先生奮戦記」。うまい!彼を雇った獣医ジークフリードとその弟の日々のエピソードが強力にからむ。ヘレンとのなれそめから結婚までの失敗話がまたいい。イギリス高地の農村の日常風景がいい。 全編楽しめます。
☆☆☆☆☆☆ Da VINCI CODE Dan Brown (2003)
いやーうまく作った!活躍する場所、歴史、謎解き、どれ一つとっても一級。
☆☆☆☆☆☆ A Matter of Honour Jeffrey Archer (1986)
冷戦下の話。少し古いのですが、「イーコン」をめぐるこのジェットコースターのようなストーリー展開はすばらしい。本を置くのが惜しい心境になります。鉄板としてお薦め。
☆☆☆☆☆☆ Gone South Robert R.McCammon (1992)
マッキャモンの典型作。奇抜な登場人物、思いもよらない話の展開。アメリカの南に、どんなオカルト的な桃源郷があるというのか、それだけでも興味が続きます。
☆☆☆☆☆ The No’1 Ladies Detective Agency シリーズ(1) 
この英語の易しさで、10作を越える分量、しかもあきません。ボツアナの女探偵とその周辺の人々のエピソード、人は万国共通だと思わせてくれる点が最高です。余談ですが、見習いの若い方の名、9作目でわかります。お楽しみに! 現在PBで10冊発行中。まだ継続中。
☆☆☆☆☆Frost シリーズ(2)  
フロスト警部シリーズです。イギリスの仮想都市デントンを舞台にしたえげつない犯罪に昼夜なく、寝食も無視して挑むワーカーホリックの初老のおっさん警視(けっこう偉い?)フロストの物語。これが笑える、そしてイギリスの病理(というより現代の都市の病理)に鋭角でせまっているのです。ただし、緻密な推理に期待してはいけません。解決の糸口は案外・・・・です。署長マレットの、役人としてのあらゆるいやみ・小言・圧力をすべてスルーし、有能・無能な部下を引きずり回す消耗戦が特にお薦め! 作者他界のため全6冊。(最近別な著者で「若き日のフロスト」の話が出ました。未読)
☆☆☆☆☆☆The Eagle Has LandedJack Higgins (1975)
男性しかおもしろくないかもしれません・・・戦記物です。第二次大戦時のドイツ兵の一部隊がイギリスに潜入し、チャーチル殺害という目標にせまるのです。そんな無理なこと・・・ところが予想に反して・・・、しかも人の心の琴線に触れる出会いまでありなのです!
☆☆☆☆☆Pied PiperNevil Shute (1942)
初老の紳士がなぜか第二次世界大戦勃発時のフランスを他人の子を何人も預かりながら縦断し、イギリスに逃げるというちょっとありえない設定の話です。ありえないにもかかわらず徒手空拳、ぞろぞろと子供を従え、この難事を達成してしまうのです。
☆☆☆☆☆The MainTrevanian (1976)
カナダのモントリオール。知名度とは違い、どうやら寂れた町。そのメイン地区を担当する刑事LaPointe、愛する町を徹底的にどんなことをしても守り上げる。やがて上司による移動の強要。がんとして拒む主人公。その彼のところに娼婦の娘が偶然のようにして同居する。親子のような、恋人のような、不思議な関係。愛する妻に先立たれた主人公の寂寥に小さな明かり。それも長くは続かない。しかもややこしい話がからんでくる・・・事件は解決するが、寂れた町の誰もいないアパートに帰るだけの刑事LaPointe・・・・思わず「よし、それでいいんだ!」と叫んでしまう刑事小説!
☆☆☆☆☆Adventure CapitalistJim Rogers (2003)
最後は明日を切り開くヒントとしてこの本とします。世界各地をベンツで許嫁と旅する記録です。日本編もあるのです。おそらくここに登場する日本が今思えば技術立国としてのピークだったのかもしれません。現在の中国・韓国の台頭を思えば・・・このジャンルに精通しておられる方からすると「古いよー」でしょうが、当方は断言します。ジム・ロジャーズはぶれません。一貫しています。ですから古いのは当方ですので「最新作目指して今後もがんばります」と一言申してこの洋書(英書)推薦という暴挙を一旦閉じさせていただきます。
(1) The No.1 Ladies Detective Agency シリーズ  by McCall Smith
1☆☆☆☆☆The No.1 Ladies Detective Agency (1998)
2☆☆☆☆☆Tears of The Giraffe (2000)
3☆☆☆☆☆Morality For Beautiful Girls (2001)
4☆☆☆☆☆The Kalahari Typing School For Men (2002)
5☆☆☆☆☆The Full Cupboard of Life (2003)
6☆☆☆☆☆In The Company of Cheerful Ladies (2004)
7☆☆☆☆☆Blue Shoes and Happiness (2006)
8☆☆☆☆☆The Good Husband of Zebra Drive (2007)
9☆☆☆☆☆The Miracle at Speedy Motors (2008)
10☆☆☆☆☆Tea Time for the Traditionally Built (2009)
(2) Frost シリーズ  by R.D.Wingfield
1☆☆☆☆☆Frost At Christmas (1984)
2☆☆☆☆☆A Touch of Frost (1987)
3☆☆☆☆☆Night Frost (1992)
4☆☆☆☆☆Hard Frost (1995)
5☆☆☆☆☆Winter Frost (1999)
6☆☆☆☆☆A Killing Frost (2008)
(最終稿 2011年7月20日)

(c) 2004-2014 必ず役に立つ体験記