禅僧の漢詩資料である『中華若木詩抄』に、 「雲ハ石ヨリ生ズルニヨリテ、石ヲ雲根ト云ゾ」とあります。
高い山の岩にぶつかった水蒸気は、命を得て湧き上がり、 さまざまな形に変化していきます。 それが雲だというのです。 つかみどころの無い雲の根源、つまり「雲根」は、 正反対に圧倒的な存在感をもった石なのです。
そこにあることはわかっているのに 触れようと手を伸ばしてもすり抜けていく「何か」を表現するために 今回は「雲根」をテーマに選びました。
硬い石を磨き上げずに輪郭が作られ、曖昧と確かさが背中合せに 共存する石彫作品。
キャスト鋳造した塊を削り、磨いて形を作る過程で、生み出される半透明の色と 滑らかさ、そして形が一致することで生み出される 触覚的な気体感を感じるガラス作品。
この二つの素材が融合されることで、ゆっくりと時を刻む「雲根」空間を 創出しました。