やってみてわかった英単語暗記法
〈前編〉
ささやかな第5信です。清水かつぞー著「英単語ピーナツほどおいしいものはない」、とてもいい単語集でした。世の中にさらに広まるといいですね。  当サイトは「くどくどと書く」ことをテーマにしております。今回もご迷惑をおかけしますが、「似た体験にニヤッとできる」方がおられるかもしれないですし。おおげさな表題については、まあ、お許しを!
「英単語ピーナツほどおいしいものはない」
金メダルコース・銀メダルコース・銅メダルコース、合計3350単語を5ヶ月で暗記!
 市場経済・社会思想・経済書(ただし啓蒙書)に挑戦
前回の「身長の2倍の英書読破報告」の後、さすがに一服し、考えました。
→疲れたー・・・→目先を変えよう。もう紹介本とはおさらばだ。そうだなー・・・世の中、ーリーマンショック以降の動揺期だし・・・→ちょっと無理をして、難しい本に挑戦しよう。→いわゆる大人の読書をしてみよう・・・こんな思考の流れでした。
そこでまず腕試し。文字通り世界を駆け回った投資家、ジム・ロジャースの「 Adventure Capitalist 」(1)、この人、人なっっこい顔付きと違い、インテリでした。けっこう難しい言葉が出るのです。うーんさすが、エール大、オックスフォード大学出身、あのイギリス経済界全部を彼の一言で怒らせた人だ・・・知らなかった話・土地の様子が盛りだくさん。世界ってそうなんだー・・・
次にエマニュエル・トッドの「 After the Empire 」(2)。むしろこの本の方がすらすら進みました。理由はおおまかな枠組みさえ把握できれば展開される文になじみやすいからでしょう。加えてフランス語からの英語翻訳版ということもあったのでしょう。世界を動かす軸の一つとして日本も出てくる。人口統計学から世界の流れが読めたとはコロンブスの卵でした。
その次として、古本としてアマゾン経由でイギリスに注文した「 Pied Piper 」(3)。作者ネビル・シュートは日本では「渚にて」で知られている作家。この「外国への古本の注文」というのも私にとってはまだ2度目のため、無事に本が到着したときはちょっと興奮しました。話は、70才間近の老人が8才と5才の他人の子二人を連れてナチスのフランス進行直後、ジュネーブ近郊からフランス中心部を徒手空拳、ほぼすべて歩いて縦断し、最期は子供7人を引き連れ海路イギリスに帰り着く話。尋常でない設定下での奇蹟のようなエピソードにはらはらどきどき、いい話でした。だんだん自信が付いてくる・・・
(1) Jim Rogers 「 Adventure Capitalist 」(2003)
(2) Emmanuel Todd 「 After The Empire (Après L'empire) 」(2002)
(3) Nevil Shute 「 Pied Piper 」(1942)
 うーわからん!・・・
ところが、4冊目として、ガルブレイスの「 The Great Crash 1929 」(1)。1929年の大恐慌検証の本。この本で私、力尽きました。初めのうちはよかったのですが、途中から進まない・・・何と言うか、経済の言葉のせいか、うまく頭に入ってこない。ちょっと一服と本を置いたのが今回の単語本への方向転換の始まりでした。
(1) John K Galbraith 「 The Great Crash 1929 」(1954)
 村上さんの本に出会う!
そういえば、今までは小学生・中学生・高校生レベルの本選びだから当然かー・・・いくら啓蒙書でも著名な経済学者の本です。大学生の語彙がないとだめかもしれないなー・・・4月始め、ひさしぶりに娘たちに会いに行き、彼女たちが住んでいる町の本屋に行きました。やはり本屋は地域性がでますね、置いてある本の傾向が違う。グーグル副社長の村上さんのベストセラー「シンプル英語勉強法」(村上憲朗 2008)が平積みされていました。若手の英語関連本としてシステマチックに出来た本は結構あるようですが(いかに早く、いかに効率よくTOEICで高得点を取るかの本などが代表)、ある程度の年配の「味のある英語関連本」はそうそう出ないため、これには興味津々、早速購入しました。一読し、斬新さに感動。普通、英語が使える人の記録でこれほど単語に関して苦労した話は書かれていないものです。それも大学受験レベルより上での英単語の苦労話です。もう一つ、ビジネスマンの方の本はどうしても体系性に若干欠けがちなものですが、村上さんのこの本は実に説得力があります。
その単語編で紹介されているお薦め本、「英単語ピーナツ銅・銀・金」。読んでいて、私が今詰まっているのは大学受験レベルを越すあたりの6000~10000の英単語なんだなーと今までの経過について反省(1)
DUOのような英語の一文に3~4単語をちりばめる無理はそうそう出来る策ではありません。2単語をセットにするのは単語の機能もわかる良い作戦です。前例がないからピンとこないだけです。そう考えれば得心。村上さんお薦めの「2単語セット(つまり、ピーナツ)」の威力を信じて、2009年4月5日から英文読みを一端中止し、銅を始めました。
(1) とはいえ、そうなったのには理由があります。以前に記しました通り、TOEIC対策本でなく、受験用でもない単語集・・・少し前の記憶しかないのですが、そのレベルの「良い単語本」はないように感じていたのです(今はどうなのでしょうか?)。何しろ需要自体がそれほどないはずですので。「英単語ピーナッツ・・・前書きに國弘正雄先生の推薦があったので、銅は買ったなー。その後積ん読状態のまま・・・」。眺めた時期もあったのですが、「やさたく」を始めたころで意識的に単語本は遠ざけていましたことと、カバーの歌詞やらピーナツの絵柄やらがやはり抵抗感ありすぎてどうにも手がでなかったのです。そういう、「すぐ近くにあるのに死角に入ってしまった本」だったわけです。私の存じません最近のよい本があるのでしたらこれまたお詫びします。ピーナツはすばらしいと申しているだけですのでお許しを。
 5月の連休に「銅」を高尾山にまで携行  前半もたもた、後半一気呵成
率直に申しますが、少しなめた気持ちで始めました。しかるに第一回目の通読に7日かかりました。慣れていないことも一因でしょうが、要するに力がないだけのことでした。最初の10回の通読が終わったのは5月9日、通算で実質24日かかったことになります。途中5月の連休に高尾山にハイキングに行ったときもザックの中にはこの本がありました。また病気だと笑われることは承知していますが、初めの5回の通読が終わった後でしたので、短時間での777英文の通読が出来ることに気づき始めていたからでしょう。一気呵成状態に入るとこの本のすごさがわかってきます。
最初に感じたことは、銅で戸惑うのは、取り上げられている英語の語義が第2義にあたるタイプのため若い時に第1義で覚えた記憶がじゃまして、うまく覚えられないということでした。例えば110のdecline、247のobserveなどです。結局1262単語中85単語に「?」がついて、知らない率はおよそ6.7%でした。見方を変えると15単語に一つ「?」です(1)
(1) はてな(?)は「完全に知らない単語から、覚えているかどうかあやしい単語、までの全体」です。ここを厳密にしない方が日常生活に支障が出ないのでそうします。科学的ではありませんがそう間違ってもいないのでお許しを。
当時のメモには
  • 分野によってわかりやすいところとわかりにくいところがある。法律関連が一番覚えにくい。
  • 初めは「下の穴埋め英語をあてるクイズ」をしているだけ。
  • 受信語としては知らない単語は基本的にはなかった。
  • つまずくのは第2義として使われているタイプ。
  • この本(銅)は知っているつもりでわかっていないということを確認する本。
  • 発信に必要な2単語セットが豊富。その意味でこのセットがすぐ口をついてでてくればすごい。初級を過ぎた人も侮れないすぐれものだ。
 銀は予想より手強い  法律編でアップアップ。 plead guilty, render a verdict 何それ?
銀は5月9日から始めました。初めの10回が終わったのは5月28日です。20日間で通過したことになります。正直に申しますと、この銀は初級用と上級用の2冊の真ん中の位置のため、通過点という気持ちが初めはどうしてもしました。そのため、本来の難しさより若干安易に通過した気がします。結局1192単語中283単語に「?」がついて、知らない率はおよそ23.7%でした。4~5単語に一つが?です。これは相当なものでしたが、その多さに気が付くのは次の10回通読時でした。 そして、2度目の10回作業は予想よりかなり時間がかかりました。とにかく手を抜くとしっぺ返しが必ず来ますねー。
 金は本当に難しかった!  spare no effort, do not yield to adversity 一種の反語だ!
金に入ったのは銀終了と同じ5月28日からです。期待していました。どんなことになるのだろう?ということでしょうか。およそありとあらゆる「期待している新しいことを始めるとき」に共通のワクワク感です。「やった、ようやく金だ!」という感じですね。
ところがところが、驚きの第1回目でした。ほぼ全滅の印象だったのです(全滅のイメージを印象的に説明しますと、ピーナッツ単語が1ページに10~20あるのですが、内10以上に?が着いたページが7ページもありました)。それ以上粘るのはあきらめ、とにかく知らない単語を片っ端から○で囲む作業に切り替え、それにすら4日かかってしまいました。○を421単語に付けました。
その後も似たり寄ったりで、第2回目9日間、第3回目8日間。第4回目7日間、第5回目8日間。この間、知らない単語の英文の方に○囲いをしながら、場合によっては英英辞書で例文を探し、余白に書き込み、そして、結局896単語中456単語に「?」を付けて一段落。初めより35単語も増えてしまいました。知らない率はおよそ50.9%でした。つまり、2単語に一つが?です。いやーひどいものでした。
その後、第6回目に初めてむりやり日曜日まる1日かけて通読を終了。ここから後の4回は1日か2日で全部通読しました。ピーナッツ方式はここがすごいところです。最初に苦労して下地を作ると、後は一気呵成に練習できるのです。但し、主として「英語文を見て日本語を思い出す方式」です。最初の10回の通読が終わったのは7月10日です。44日間「金」と付き合ったわけですね。

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